『SFプロトタイピング』は、SF的な発想をもとにプロトタイプを作成し、企業ビジョンの策定や新規事業の創出に活用する手法です。
本記事では、『SFプロトタイピング』を理解するうえで特に重要と思われる事項について、前後編でわかりやすく解説していきます。
今回は前編として、
『SFプロトタイピング』における『プロトタイプ』とは何か?(具体的に何を試作するのか?)
という疑問の解消を図ります。
『SFプロトタイピング』における『プロトタイプ』とは?
『プロトタイプ』の元々の意味は『原型』です。転じて、現在では『試作品』の意味でも使われます。
では、『SFプロトタイピング』における『試作品』とは何でしょうか?
それは、ずばり『未来』です。
最初のころ、私は『試作品』という言葉の印象(物品を表しているような語感)に惑わされて、この大前提を理解できていませんでした。じつのところ、『試作品』というのは「SF小説」のような「物」なのだと思っていました。
しかし、よく考えてみたら、それだと「SF的な発想をもとにSF小説を作成する」という当たり前のことを言っているだけになってしまいます……。
私の勘違いはさておき、
『未来』を試作するといわれても、それはそれでよく分かりませんよね。
時空を操って未来を作り出せるような特殊能力者がいればよいのですが、私は会ったことがありません。
そこで登場するのが、SFです。
唐突ですが、SF作品(小説・漫画・映画 etc.)って、未来を舞台にしたものが多いと思いませんか?
タイムスリップものとか、スチームパンクとか、過去を舞台にしたSFも沢山ありますが、「やはりSFといえば未来!」と、単純な私は思ってしまいます。
いずれにしても、SF作品は様々な未来の姿を描き出せる。少なくともその機能は持っています。
したがって、『SFプロトタイピング』では、SF作品(代表的な例はSF小説)を創作して、未来を描きます。
「なんだ結局SF小説を創作するのか」というツッコミが入りそうですが、SF小説などを創作するのは、あくまでも『未来』を試作するための方便です。
時空を操る特殊能力者を探すよりも、SF小説を創作するほうが、はるかに現実的です。
『SFプロトタイピング』では、SF作品が描き出す『未来』の姿に基づいて、企業ビジョンや新規事業についての議論を展開します。
すなわち、SF作品が描き出した『未来』から逆算して、いま為すべきことを考えるわけです。
このような「先に未来を考えてから今を考える方法」を「バックキャスティング的な方法」と呼びます。
なお、活用できるSF作品は「小説」に限定されません。今回は代表的な例として「SF小説」をあげましたが、『未来』を描き得るという意味で、漫画やイラスト、映画も活用可能です。
まとめ(前編)
以上、前編では、『SFプロトタイピング』における『プロトタイプ』とは具体的に何かという点について解説しました。
記事の内容をまとめます。
- 『SFプロトタイピング』における『プロトタイプ』=『試作品』とは『未来』のこと
- 『未来』を試作するためにSF作品(小説、漫画、イラスト etc.)を創作する
後編では、「なぜSFに頼るのか?」という点、すなわち、SFをビジネスに活用する意義について、解説したいと思います。
今回はここまでです。